10分で分かるルベーグ積分のキホン

この記事の目的

ルベーグ積分をこれから学ぶ読者のために、ルベーグ積分の概要を解説します。この記事を読むためにはリーマン積分の理解が必要です。

必要な前提知識

ルベーグ積分に至るまでの流れは大まかに、集合論→測度論→ルベーグ積分です。リーマン積分の定義を思い出してください。リーマン積分では、ある関数$f(x)$の描く曲線下の面積を細長い長方形を使って近似します。その際長方形の面積は底辺×高さ、すなわち$(x_n-x_{n-1}) \times f(x)$ (ただし$x_{n-1} \leq x \leq x_n$)で求めることができました。このように底辺が単なる線分のときは、その長さは$x_n-x_{n-1}$で計算されます。しかしながら、この底辺に穴があいていた場合はどうでしょう。例えば底辺が$x = 0$から$x = 1$までの線分で、その中点$x = \frac{1}{2}$だけ取り除かれていた場合、底辺の長さはどう表せるでしょうか?

この疑問を解消するため、測度論では積分範囲(リーマン積分でいう$\int_a^b f(x) dx$のaからb)を集合として考えます。上の穴があいた線分の例では、積分範囲は$\{ x \mid 0 \leq x \leq 1, x \neq \frac{1}{2} \}$ と表すことができます。このように積分範囲を集合として扱いたいため、ルベーグ積分を学ぶには集合論の記法に慣れていることが必要です。集合論のテキストとしては『論理・集合と位相空間入門』がオススメです。大学一年生が手に取れるような、前提知識がなくとも大学数学の基本を押さえられる本になっています。

さて、積分範囲を集合として扱うすべを身につけた後は、具体的に集合の大きさを測る段階に入ります。測度論はそのための道具です。測度とは集合の大きさのことで、長さや面積の一般化だと思ってください。例えば長さ1の線分の測度は1です。測度を使えば、$\{ x \mid 0 \leq x \leq 1, x \neq \frac{1}{2} \}$のように簡単に長さや面積が分からない集合の大きさを測ることができます。結果、晴れて 集合の大きさ×$f(x)$ を計算することができ、ルベーグ積分の値が求まります。ルベーグ積分のテキストは基本的に測度論の内容も含むので、測度論のためにテキストを買う必要はありません。

ルベーグ積分のプロセス

測度論によって集合の大きさが測れるようになったとして、次はいよいよルベーグ積分を行います。初めに重要なのは単関数の定義です。

$f$がAを定義域とする関数で、$f(A)$が有限集合であるとき、$f$は$A$における単関数であるという。

引用 : ルベグ積分入門(ちくま学芸文庫)

ここで$A$は集合です。先ほど説明したように、ルベーグ積分では積分範囲を集合として扱うためです。$f(A)$が有限集合であるというのは、$f(x)$が$x \in A$において有限個の値しかとらないという意味です。例えば定数関数$f(x)=c$, $x \in \mathbb{R}$は一つの値しかとらないため単関数です。$f(x)=x$, $x \in \mathbb{R}$は無限個の値をとれるため単関数ではありません。

なぜこの単関数が有用かというと、単関数に対してはルベーグ積分が簡単に定義できるためです。今$A$における単関数$f$を考えます。定義から$f$は有限個の値しかとらないため、$f(A) = \{c_1, c_2, \cdots, c_n\}$と書くことができます($c_i$は$f$のとる値です)。次に$A$をいくつかの集合$A_1, A_2, \cdots, A_n$に分けることを考えます。Aを分割するためには、$f(x) = c_i$となるような$x$の集まりを$A_i$としてやればいいでしょう。

もうお気付きかもしれませんが、各$A_i$上で、$f(x)$は常に$c_i$という値をとる定数関数になっています。定数関数なら積分するのは簡単で、$A_i$の大きさ×$c_i$を計算するだけです。底辺×高さと同じアイデアです。便宜上、以下では $A_i$の大きさを$\mu (A_i)$と書くことにします。

最後に、上で行った定数関数の積分を足し合わせてあげれば$f$の積分となります。すなわち、

$$\int_A f(x) dx = \displaystyle \sum_{ i = 1 }^{ n } c_i\mu(A_i)$$

が単関数$f$の積分となります。

単関数のルベーグ積分ができたら、次に一般の非負関数(単関数でなくともよい)$f \geq 0$のルベーグ積分を考えます。定理により、$f_n \rightarrow f$となるような単関数の列$\{f_n\}$の存在が保証されています。各$f_n$は単関数なので、上に書いた方法でそのルベーグ積分$\int f_n(x) dx$を求めることができます。$n$を大きくすれば$f_n$は$f$に近づくので、$\int f_n(x) dx$の極限

$$\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \int f_n(x) dx$$

は$f$のルベーグ積分と一致することが想像できると思います。このプロセスはちょうどリーマン積分において曲線の下の面積を細長い長方形で近似し、分割の細かさで極限をとる操作に対応しています。

最後に、$A$で定義された(負になるかもしれない)関数$f$を考えます。$f(x) \geq 0$となるような$x$の集合を$A_+$と書き、$f(x) \leq 0$となるような$x$の集まりを$A_-$と書くことにします。$A_+$上で$f$は非負関数で、$A_-$上で$-f$も非負関数なので、上の方法によりそのルベーグ積分を求めることができます。結果、$f$のルベーグ積分は

$\displaystyle  \int_A f(x) dx = \int_{A_+} f(x) dx$ – $\displaystyle \int_{A_-} -f(x) dx$

となります。

まとめ

ルベーグ積分は、単関数→非負関数→一般の関数のように順番に定義することができます。その際$f(x)$の値に対応して積分範囲を分割するというアイデアを利用しますが、これがリーマン積分が横方向(定義域)の分割と言われるのに対してルベーグ積分が縦方向(値域)の分割と言われるゆえんです。この記事を読んで、きちんと測度論を勉強してみたいと思った方は左の『ルベグ積分入門』がオススメです。リーマン積分の復習から入り、集合論を経て測度論の内容が始まるためリーマン積分を知っていればすぐ読み始めることができます。

ルベーグ積分の応用については次の記事をご参考下さい。

人はなぜルベーグ積分するのか?

“10分で分かるルベーグ積分のキホン” への1件の返信

人はなぜルベーグ積分するのか? – MATHFREAK にコメントする コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です